名古屋マダムは美が命 10万部発行の女性誌牽引
2014年 05月 23日
2014年5月23日20時42分
東海地方を中心に10万部を発行する女性誌がある。登場する読者モデルはプロに負けない美意識とゴージャスさの持ち主たち。撮影現場は華やかな雰囲気に包まれていた。
名古屋マダムになるには
「笑顔で。かわいい!」
土曜日の昼すぎ、名古屋市内の貸しスタジオ。30代から40代前半の女性たちが華やかな黄色のドレスや白いタンクトップを身にまとい、季刊誌「メナージュケリー(メナケリ)」(ゲイン社)の撮影にのぞんでいた。
メナケリは「自分磨きを大切にしている女性」向けに2002年に創刊。創刊号では名古屋市内の高級住宅街、白壁と八事に住む「伝説のマダム」を取り上げた。東海地方を中心に10万部を発行する。
13年秋号の特集「秋もやっぱり、『名古屋系』スタイルが絶対!」では創刊号からの「華やかさと気品にあふれ、眩(まぶ)しいまでの愛されオーラをまとった名古屋系スタイル」の変遷を伝えた。様々なコーディネートの読者モデルも登場し、「肩口がふわふわのあしらい」「大きなリボン」などと名古屋っぽいポイントを紹介した。
誌面に登場した読者モデルは200人以上。その中に「美クトリーズ」と呼ばれる「スペシャル読者モデル」が4人いる。表紙を飾り、ブログで買い物や食事など「美クトリーな毎日」をつづる。
以前は女優やプロのモデルが表紙に登場していたが、13年夏号から4人が表紙モデルに定着した。「名古屋の女性はゴージャスなので、読者モデルでも雑誌の品格は保てる」と判断したという。
街中で読者から声をかけられることもあるという美クトリーズは「名古屋マダム」のお手本。
「ビューティー担当」の内ケ島有美さん(36)は「私は名古屋ではラフなほう。でも東京では『夜の人?』とか『派手』と言われる。東京はシンプルですてきだけど、私は手抜きのない名古屋が好き」と話す。ショートヘアだが「ストレートは寂しいし間抜けな感じ。ほぼ毎日コテで巻いています」。
「ファッション担当」の大岩芽久さん(40)も3歳頃から母親に髪を巻かれていた。結婚前に「飽きられるといけないから常にきれいにしておきなさい」と言われたといい、今もふんわり巻き髪は欠かさない。
ただ「9歳でハイヒールに目覚めた」という麗子さん(42)は名古屋っぽい「バルーンスカートにカチューシャ」より「焼けた肌にミニスカート」のような格好が好き。「名古屋の女性も、もっと遊びを取り入れて、はじけちゃってもいいのでは」と提案する。
■「メナケリ」から全国区 水谷雅子さん(45)に聞く
「メナージュケリー」で評判となり、後に全国版の雑誌やテレビにも進出。45歳の主婦ながら「20代に見える美魔女」と人気の水谷雅子さん(愛知県在住)に、名古屋のおしゃれ観について聞いた。
――名古屋の女性のファッションについて、どんな印象を持っていますか
名古屋の女性のファッションは、とても華やかなイメージがあります。
フリルやレースに、ふわっとしたスカート、ラブリーなピンクの小物。おおぶりでインパクトのあるアクセサリーにラインストーンたっぷりのネイル……。「かわいい」と「きれい」の二つを持っている。
それにみなさん、身だしなみをすごくきちんとされているんです。お茶するだけでもきちっとなさっている方が多いので、私も意識しています。
また、「ブランド好き」のイメージがあると思いますが、「全身ブランド」ではなく、お値頃アイテムもちゃっかり採り入れている方が多い印象です。美容法などの情報も早く、友人同士で情報交換もよくしています。
――名古屋の女性はなぜ、華やかな方が多いんでしょう。
徳川家康さんが天下をとって江戸に美人を連れ去り、残った人たちが負けじと自分磨きをするようになったという話を聞いたことがあります。失礼な伝説ですけど、名古屋の女性の高い美意識にはこんな由来があるのかも? と思うことはあります。私もキープするために、努力を続けています。
――具体的に、どんなことに気をつけて生活されてますか。
朝起きたら顔にシートマスクをつけたままお弁当を作ったり、メークをする前に「かっさ」という道具で顔をほぐしたり、お風呂を出た時にはたとえ5分でもスチームをあててマッサージをしたり……。「ながら美容」だったとしても、やるとやらないでは全然効果が違います。ドラッグストアなどのリーズナブルなアイテムもいろいろ試しています。
でも、お手入れ以前に健康が一番。バランスのいい食事を心がけています。朝はグレープフルーツジュースを飲むのが習慣。また、それでも調子が悪いときは野菜をたっぷり煮込んだデトックススープを作り、3日間で食べきるといったこともしています。そうすると腸の調子もいいんです。
インターネット上で「私が美容に1日5時間かけている」なんてかかれているんですけど、それはさすがにウソですよ(笑)
――「美魔女」といわれていることについて、周囲の反応は。
主人は応援してくれます。家のことだけきちっとやればいいと。家庭が第一なので、お仕事で東京に行くときも、だいたい日帰りです。
娘は20代なので、「お母さん、20代にみえるって、それ、あり得ないよ」「(姉妹ですかと買い物中にいわれても)調子にのらないでよ」と、よく叱られます(笑)
――これから、どんな風に年を重ねていこうと考えておられますか。
女性に生まれたからにはきれいでありたいですし、自分にとって美は永遠のテーマ。「ふんわりとしたスタイルがお似合い」といっていただくこともありますが、東京のシンプルなスタイルにも憧れますし、デニムやコンサバなどいろんな着こなしを楽しみたい。美は一日にしてならず。努力を続け、きれいに年を重ねていきたいです。
◇
〈みずたに・まさこ〉 1968年、愛知県生まれ。37歳のころ、名古屋の美容室でヘアモデルに誘われたのを機に女性誌に登場するように。家族は医師の夫と22歳の長女、20歳の長男の4人。
■「お嬢奥様」東京も注目
若々しい中年女性に“美魔女”の称号を与えた雑誌「美ST」(光文社)は、09年の創刊時から名古屋スタイルの独自性に注目してきた。井上智明編集長は、名古屋では裕福な専業主婦層が健在と指摘。「美容にお金をかける余裕があり、可愛く、リッチ感のあるものが好きな『お嬢奥様』が多い印象がある」と話す。
松坂屋名古屋店の婦人服担当マネジャー田中克幸さん(40)は「嫁いだ娘が親元近くに住み、母娘が車で来店されるケースが多い。母が娘世代の流行にも敏感なのが独特のスタイルにつながっているのでは」と話す。
化粧品の売れ筋にも際だった特徴がある。同店化粧品フロアマネジャー伊藤浩人さんによると、資生堂の「クレ・ド・ポー ボーテ」、スイスのブランド「ラ・プレリー」の「スキンキャビア」など、2万円前後の高級美容液の販売数は、東京や大阪の百貨店を抑えて全国1位だ。
「内面からのエイジングケアで本物の美を追究する。嫁いでも身近に『母の目』がある緊張感が『家でもきちんと』につながり、そんな姿を見た娘が脈々とそのスタイルを受け継いでいるのかもしれない」と伊藤さんは言う。
■10年前から読んでます 東京の藁品さん
東京都練馬区に住む藁品(わらしな)真代さんは、10年前から「メナケリ」を購読。昨年は「プロの手で生まれ変わる! 憧れの『名古屋系』」という企画で誌面にも登場した。
企画で体験した名古屋風ヘアメークでは「目ヂカラの強さ」に驚いた。まぶたの上下につけまつ毛をつけ、アイラインを引いてマスカラもばっちり。「あんなに目が重かったのは初めて」と笑う。
母親が名古屋出身という藁品さんは、東京の雑誌で人気の「格好良いママ」より、名古屋発の誌面にあふれる「ラブリー」にひかれるという。ワンピースなど、13歳の娘と共有することもある。憧れは、元女優の君島十和子さん。「十和子さんのように、いくつになってもかわいくいたい」と朝晩のパックを欠かさないという。
http://digital.asahi.com/articles/ASG5K54SGG5KOIPE00P.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG5K54SGG5KOIPE00P
季刊紙「メナージュケリー」の撮影に臨む、読者モデルの女性たち=名古屋市中区、吉本美奈子撮影
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